最近、某アイドルグループの飲酒が原因の問題行動が原因で注目を浴びるようになった[アルコール依存症]
アルコール依存症は薬物依存症のひとつです。他の薬物依存症と同等で脳・行動の病気と呼ばれます。
また誤解されやすいのが、アル中(急性・慢性アルコール中毒)です。
アルコール中毒は社会的、また道徳的・論理的な観点から貼られたレッテルであり、医学用語ではありません。
アルコール依存症、薬物依存症は完治することが少ない病気とされています。
長期に渡って断薬(アルコール依存症でいう断酒)をしても再びたとえ少量であっても摂取してしまうと短期間で断薬(断酒)前の摂取行動に戻る確立が高いからです。
そして再熱しやすい病気のため、周りや家族の監視や支えが大変重要となるといわれています。
このサイトではアルコール依存症を発症してしまう原因や、主な症状と診断を受けるにあたり必要な検査、そして治療についてご紹介します。
アルコールは依存性薬物です。そのアルコールを含んだ嗜好品(アルコール飲料)を繰り返し摂取することで脳への再摂取欲求を引き起こす強化作用に対する感受性が増大します。
強化作用の仕組みは他の薬物依存に対しても共通です。アルコールはGABA-A神経を介して側坐核からドーパミンを放出させます。
この強化作用に対する感受性の増大が、飲酒行動、飲酒パターンを病的にし、何とかお酒を飲もうとする探索行動を引き起こします。
また飲酒量や飲酒する頻度によって、この感受性が増大するスピードがかわってきます。
そして強化作用に対する感受性が強いと量や頻度に関係なく、短期間、少量でも依存症に至るというわけです。
繰り返し飲酒することや強化作用に対する感受性がアルコール依存症を発症する原因となり、よく聞く人格や性格に対しては科学的な根拠はありません。
また、すべての多量飲酒者が必ずアルコール依存症を発症するというわけではありません。
様々な研究から、アルコール依存症の原因の約50%は遺伝要因であり、残りが環境要因だと推定されています。
ただし環境要因は少し複雑な部分もあり必ずしも意見の一致をみていないなか、遺伝要因は科学的に実証されてきた部分もあります。
アルコール依存症の防御因子として働いているアルコール依存症の代謝酵素の遺伝子多型をあげて説明すると、消化器官から吸収されたアルコールはアセトアルデヒド、そして酢酸に酸化されます。
アセトアルデヒドを酸化する2型アルデヒド脱水素酵素には突然変異により低活性型・非活性型が存在します。
これらは飲酒後に高アセトアルデヒド血症を引き起こしフラッシング反応を起こします。(頭痛・心悸亢進・顔面紅潮など)
このような不快な反応のために2型アルデヒド脱水素酵素は強力な防御因子となっているわけです
その一方でアルコール依存症の発症を促進する要因となっているのが、アルコールに対する低反応性です。これは俗にいう「酒が強い」というものです。
また2型アルデヒド脱水素酵素とは別の原因で酒に強い・弱いというのは存在します。主に神経細胞の受容体などの遺伝的差異によるものだそうです。
アルコール依存症の主な症状はご存知の通り、病的な飲酒行動です。
しかし始まりは緩やかで気付きにくいというのが特徴になります。
そしてその後この病的な飲酒行動が摂取行動・探索行動の変化としてあらわれるようになります。
摂取行動は日常生活の合間に繰り返し飲酒したり、飲んで寝てを繰り返したりする病的な飲酒パターンです。
またこの持続時間も最初は短時間なのに対し、進行するにつれて徐々に延長していく傾向にあります。
この飲酒パターンと表裏して飲酒に対する渇望が探索行動としてあらわれてきます。
飲酒を妨害する人に危害を加えたり、酒のために借金をしたり、飲んでいないと嘘をついたり、しまいには隠れて飲酒したりと様々な行動として現れます。
このまま症状が進行すると飲酒中心性と呼ばれる状況になり何処へ行くにも飲酒の可否で優先で物事を判断するようになっていきます。
そして繰り返した飲酒のあとに飲まない時間が出来たり長くなると、不眠やお棺、血圧が高くなったり、動悸や頭痛、異常な発汗等自律神経症状や筋肉の痙攣や硬直などの神経異常、そして幻視幻聴などの精神症状が出るようになります。
この症状がおさまると、刺激に敏感になり、怒りっぽくなったり、鬱などの情動が不安定な状態が続きます。
また繰り返す飲酒が原因となる合併症に、膵炎。膵石、肝硬変や心筋症などの内臓疾患、前頭葉機能障害、アルコール痴呆、小脳変性症、末梢神経炎などの神経および精神疾患があげられます。
アルコール依存症の検査には、飲酒パターン分類とCAGEテストなどのスクリーニングテストがあり、それらで大体診断ができます。
アルコール依存症は他の薬物依存症同じように、精神作用物依存症、物質依存症といわれ、共通の診断基準があります。
世界保健機構の精神作用物依存症診断基準やアメリカの精神医学会の物質依存診断基準がそれらにあたります。
医療機関ではこれらを用いて診断をします。
■アルコール依存症は治療できる?
残念ながら、現在のところ断酒以外の治療選択しはありません。
特に優れた治療法が無いからです。
そのため治療の場は病院だけに限らず、断酒会やAA(アルコール・アノニムス・アルコール匿名会)等の自助会に参加することで治療、断酒への意識付けを他の参加者とともに行うことで向上心を持って行うことができます。
医療機関で言えば、アルコール専門クリニックや精神病院のアルコール専門病棟等があげられます。
日本のアルコール専門病棟の大半は断酒への動機づけを入院の条件としており、約2~3ヶ月の入院期間中に、断酒会やAAとの連携もとっていきます。
しかし、動機づけが困難で3ヶ月以上の長期入院が必要な人の専門病棟がある病院はほとんどありません。
また、治療薬には以下のものがあります。
・抗酒剤
ジサルフィラム・シアナマイドの2つが用いられます。
これは飲酒渇望を抑制する作用はなく、アセトアルデヒドの代謝酵素を阻害して飲酒時の血中アセトアルデヒド濃度を上昇させ、飲めない人と同じ生体反応を起こすことでアルコールを遠ざけるように促す薬剤です。
・渇望抑制剤
欧米では使用されていますが、国内では未承認のアカンプロセート・ナルトレキソンという薬剤があります。万全ではありませんが、ほかの療法と組み合わせることで高い断酒効果が得られているそうです。
いかがでしょうか。
どこでも手に入るアルコール飲料が引き起こす依存症は、誰もが簡単に入手できるビールや日本酒、缶チューハイ、ワイン…と身近なものが原因で発症します。
そしてその依存性は薬物依存症と同じでそこから抜け出すのは容易に出来るものではなく、再発率も非常に高いです。
何よりどこでも買えるというのが一番の原因ですが、その生活を見守ってくれる家族や周囲の目が何よりも重要になってくるとされます。
意思が弱いから、など本人の性格が理由とよく耳にしますが、それほどに依存性というものは強力で抗えないもので、一概に性格が原因とは言い切れないものがあります。
性格が豹変してしまったりと、支える側としては辛い環境もあると思いますが、そんな時は速やかに医療機関に相談するようにし強制的に断酒が出来る環境へ移すことも大事です。
何より本人に自覚がないと、自分の意志で治療を受けること自体が難しいので、周りの人間の援助は不可欠といえます。
身内にアルコール依存症(と思われる)の人間がいてもそれを恥じたりせずに、相談できる機関や人はしっかりと活用し1日も早い治療を目指すようにしましょう。
お住いの地域に断酒会が無ければこちらに相談してみると良いですよ。このような場所に参加することで意欲的に断酒が出来るようになると良いですね。