近年、たびたび聞かれるようになった子供の鬱ですが、あまりピンとこない方も多いのではないでしょうか。
実際子供の鬱は分かりにくいものです。子供自身がそれを鬱だと分からないから大人にもうまく相談することが出来なかったり、大人もそういった状態を軽視しがちになる事が発見が遅くなる原因かもしれません。
しかし子供には子供なりの悩みや苦しみがあります。いつもと様子が違うと思ったら用心するようにしましょう。
このサイトでは最近よく聞く、子供の鬱について、その症状を見逃さない方法や、原因や症状、病院での治療方法をご紹介します。
心の病気は早期発見が大切です。体に不調が出ると更に体調が悪い事に対しても悩んでしまう事があり、治るのに時間もかかります。
いつもと様子が違ったり、ふさぎ込んでいるように見えたり、倦怠感などを訴えてきたときは軽んじることなくしっかり話を聞いてあげましょう。
症状によっては早めの受診が大切です。異変を感じた時はそのままにせず専門機関に相談するようにしましょう。
鬱病と聞けば、大体の方は大人がなるものだと思っていませんか?
対人関係や、社会によるストレスに周囲からのプレッシャーを抱えがちな大人ほど、確かに鬱になりやすいイメージがあるかもしれません。
日本産業カウンセラー協会が過去に行ったアンケート調査でも鬱病を発症している患者のうち、およそ8割が30~59歳の人でした。
この結果からはやはり鬱病は大人がかかるものというイメージを抱きやすいかもしれませんね。
しかし、近年では児童や青少年にも鬱病は広がりつつあるそうです。
また年齢は様々で、20歳目前の患者もいれば10歳前後の子供等、その年齢幅は広いのです。
子供の鬱は「小児鬱」という名称があり、大人の鬱とは違った症状がみられることがあります。
大人とは違い、子供は自分の気持ちや考えをきちんと言葉にすることが出来ないことがあったり、また体の不調や気分の落ち込みを大人とは違う感覚でとらえてしまう事もあります。
そして子供の鬱は発見が困難なことが多いです。
大人目線では大したことはないと軽んじてしまったり、誤解してしまう事が原因の一つになります。
子供は分かってもらえないことが「理解してもらえない」という思いを生じさせ、大人に助けを求めることが出来なくなることもあります。
いつもと様子が違うようなら、鬱病の可能性も意識し、しっかりと優しく話しを聞いてあげましょう。責めるようにしてしまうと逆効果になります。
子供も鬱を発症する可能性があるのだと知っておくことが、早期発見につながります。正しい知識をつけて日ごろから備えておきましょう。
小児鬱にはいくつかの典型的な症例がみられるそうです。
一般的な鬱と共通する部分も多いですが、小児鬱特有の症状もあります。
・抗いたい悲しみや無力感に襲われる。
・抗いたい苛立ちを覚え、過剰な攻撃性を示す。
・強い退屈感を訴える。興味や関心を失う。
・著しい食欲の増減とそれに伴う体重の増減。
・不眠などの睡眠障害を患う。
・生きることへの執着を持てなくなったり、突発的に命を絶とうとする。
いくつかは一般的な鬱にも見られる症状ですが、特徴的なのが多くのケースで「苛立ちを覚える」子供がいることです。
悲しい気分や辛い気分から深く沈み込む傾向の多い一般的な鬱病と異なり、小児鬱ではイライラを募らせ周囲に当たり散らすようになるケースが多いのです。
また、この「イライラ」が小児鬱を知らせるサインになる場合もあります。
理由もなく突然子供がイライラし始め、それが続くようであれば、小児鬱を疑うことも必要です。
もちろん子供にとって急に気分が不安定になったり怒り出すことは日常茶飯事でもあります。もともとの性格が怒りっぽい子供であれば、突然のイライラも不思議なことではないと思います。
その為、大人目線からみて子供が鬱病かもしれないと不安になったときは、まずは専門機関に相談をしてみましょう。専門家に診てもらうことで正しい状況を知る事が出来ます。
■小児鬱の原因
鬱病の原因はまだ解明されていない部分も多く、断定が難しいのが現状です。
小児鬱も同様で、何がきっかけで子供が鬱を発症してしまうのか、明らかになっているわけではありません。
ですが、一般的な鬱も、子供の鬱も、たいていはストレスが原因であることが多く、子供にとって多大なストレスになるような出来事や環境が小児鬱の原因の一つではないかと考えられています。
特に子供の場合は、周囲の環境が激変する事態に強いストレスを感じる傾向があります。
下記はその一例です。
・進学やそれに伴う受験、親の転勤に伴う転校など
・学校や塾でのいじめ
・両親の不仲や離婚、死別
・親や教師からの叱責
進学や受験、転校はそれまでの環境が大きく変わることがほとんどです。
慣れた場所や環境には居心地の良さを感じ、初めての環境には緊張やストレスを感じるのは大人も子供も同じです。
しかし人生経験がまだ浅い子供にとっては、進級やそれに伴うクラス替えにも耐え難い苦痛に感じることがあり鬱病を発症する事があります。
大人にとっては「たったそれだけの事で」と思いがちですが、子供にとっては大変な出来事なのです。
また親や教師から怒鳴りつけられたり、激しく叱責されることがきっかけで鬱になる子供も多いそうです。
大人にとっては教育の感覚でも子供にとっては「怒られた・怒鳴られた」という印象が恐怖に感じてしまったりします。
それが大きなストレスになり自己肯定感が持てなくなったりすると、鬱病の発症リスクが高まるとされています。
また同様に自己効力感が低くなり、自分では何も成し遂げられないと思い込んでしまうと無力感に陥ってしまいます。
これは鬱病の典型的な症例の一つで、脱力感や興味、関心の喪失と重なる症状です。
無力感が根付くと日常生活にも支障をきたし、学校や仕事等社会的な活動を行うことが難しくなります。
■小児鬱の治療方法
鬱病の治療方法は症状に応じて心理療法と投薬療法を組み合わせて行います。
抗うつ剤を用いる投薬療法は弱った脳に働きかけて不足している神経伝達物質を補ったり、不眠や食欲不振などの身体的な症状の改善など、鬱病の治療にはよく用いられる方法です。
ですが、抗うつ剤の成分は身体への負担も大きく、小児に対しては慎重な判断が必要になります。
一般的に小児鬱の治療にはまず心理療法のみ行われ、カウンセリングを通じて投薬療法の必要性が検討されます。
子供へのカウンセリングは子供の性格を考慮してその方法を慎重に見定めます。
集団を嫌がる傾向にある子供には個別療法を、隔絶感にある子供にはグループ療法や家族療法など、個々にあった方法で行われます。
いかがでしょうか。
子供と鬱病は無縁と思われていた時代は昔の事で、近年では子供の鬱病は色んな所で耳にするようになりました。
世の中も変わり、子供の周りでも色んな情報が飛び交うようになったことも原因の一つかもしれません。
まだ幼く経験の少ない子供にとって、あまりに刺激的な情報が目の前に入ってくると子供の頭の中で処理が追い付かずパニックになることもあるそうです。
また、環境の変化は昔からありますが、色んな事が複合して起こるストレスが、子供の鬱を見逃しやすい状況になっているようにも思います。
見た目が元気でも、いつもと違う言動だったり、体調不良が長引くなどの異常を訴えているときは様子を見て状況次第では早めに専門機関の受診をおすすめします。
そして、子供の鬱病は子供だけが頑張ってどうにかなるものではありません。医師やカウンセラーとともに家族全員で協力することが大切です。