前回の8話の最後にオペを成功させ医師たちが迎える中佐伯教授は倒れた。
9話では急ぎ応急処置の手術が行われた。検査で突き止めた原因は左冠動脈肺動脈起始症だった。
渡海は佐伯にある患者の居場所を聞き出すために執刀を申し出るが佐伯はそれを断った。
佐伯は自分の手術はカエサルをもって行うように提案したのだった。
このサイトではブラックペアン第9話についてまとめました。
応急処置を施し、一旦その容体を安定させた佐伯教授。
しかし、検査の結果、左冠動脈に狭窄が起きていることが判明。
その原因と思われるのが『左冠動脈肺動脈起始症』だ。
これは、通常ならば大動脈から出ているはずの左冠動脈が、肺動脈から出ているという稀な症例です。
これにより心臓には十分な酸素がいかず心機能が悪化する深刻な状況を引き起こします。
佐伯はそれに加えて僧帽弁閉鎖不全も併発していたのだ。その為いつ心筋梗塞を起こすか分からず命に係わる危険な状態だったのです。
至急手術が必要な状態だが、この手術を出来るのは佐伯を除くと渡海のみだった。
皆の意見は一致し渡海の席を振り返るが、渡海はカンファレンスルームにはいなかった。
渡海の姿が見えないため、世良は探しに行くように命じられ院内を走り回るも見当たらない。
世良は直前の渡海の状況から『飯沼達次』について情報を得るべく、さくら病院に向かったのではと考えた。
世良の予想通り、渡海はさくら病院にいた。その待合に一緒にいたのはCRAの木下香織だった。
木下は確かにこの病院に『飯沼達次』は入院していると言う。
渡海は木下に『部屋は?』と問い詰めた。だがその理由を話さない渡海に木下は困惑したが『421号室』だと言ってしまう。
渡海はそれを聞いて即座に部屋に向かった。
そこへ世良が到着し、木下に渡海がここに『飯沼達次』を探しに来ていたのかと確認した。
木下は無言で渡海が向かった方向を世良に伝える。
一方営業が終わった病院内を歩く部外者に看護師たちは必至に止める。
その場に追い付いた世良は『佐伯教授が倒れた時に何やっているのか』と尋ねるが『お前が助けろよ』と一蹴されてしまった。
それでも止めようとする世良を押しのけて渡海は421号室に入っていったのだ。
しかし、部屋はもぬけの殻だった。
■佐伯が目を覚ます。
そばに付き添っていた婦長に『飯沼は?』と確認する。
婦長は『ご指示通り退院させました』と言うのだ。
佐伯は控える理事長選を気にしていた。
渡海は病室の様子を見て『やってくれたな』と悪態をつく。
そのまま病室を出ると、そこには院長の小林が警備員を連れてきた。
渡海は『どこに飛ばした?』と聞くが、小林は『佐伯の指示通り退院させたまで』だと言い切る。
あとのことは佐伯本人に聞けと渡海を挑発するのだった。
その場を潔く退散する渡海に慌ててついていく世良。
渡海は世良に佐伯の容態を確認すし、応急処置は済んでいるが危険な状態であることを聞く。
『大丈夫だ。問題ない俺が助ける』
『その後、俺が殺す』
そういい、さくら病院を後にした。
■病状の説明
佐伯は自分が僧帽弁を患うとは・・・とショックを受ける。
自分が執刀出来ればと悔やむがそれは出来ない。
どうするかを話し合おうとしていると渡海と世良が戻ってきた。
渡海は『私が執刀しますよ』と言うが、佐伯はそれを断った。
佐伯はカエサルを使えと言う。それが最適であり、教授命令だと。
一方西崎教授に現状を説明する高階。
西崎は佐伯の病状を好機にとらえ、理事長選は自分に優位に働くと確信した。
しかし、高階は『佐伯教授は西崎教授のミスをかばって無理をして倒れた』と言う。
だがその言葉に西崎は、自分はミスなどしていないという。処置をしようとしているところに佐伯が出しゃばってきただけだと。
倒れたことは自業自得だろうと言い放つ。『これでメスの時代は終わりだ』と。
■佐伯の手術チームと術式
高階はカエサルのシュミレーターのデータを確認しようとするが、何一つ残されていないことに愕然とする。
データは全て帝華大が持ち帰ってしまっていたのだ。
そして佐伯のカエサルによる手術は黒崎准教授がとり行うことになった。助手には垣谷外科医と関川外科医。
黒崎は佐伯教授のオペには絶対に渡海を関わらせないつもりだ。その為世良に渡海を見張るように言いつけた。
こうして佐伯のオペに向けた準備が始まった。
佐伯のオペは、左冠動脈バイパス手術と僧帽弁形成術の全く異なる二つのオペが必要になる。
アプローチは2ヶ所からかけられ手術を行うが、佐伯の心肺機能は弱っていて麻酔をかけられる時間はわずか2時間しかない。
その為同時に2つのオペを行うのは至難の業だった。
カエサルでは同時オペの先例はない。不安になる手術チーム。やはり高階にヘルプを求めようと言う声と、東城大の問題だとそれを拒む声。
その不安を払拭するために、黒崎はシュミレーションを重ね、検証するしかないという。
またドクタールームでは世良が高階にオペを手伝ってくれたら・・・と声をかけるが、高階はこれまで2度も裏切ったことに後ろめたさがあったのだ。
その後ろを何食わぬ顔で通りすぎる渡海。世良は気付かない。
世良はカエサルに一番詳しいのは高階だし、シュミレーターを使えば・・・と言うが、シュミレーターのデータは帝華大が持って行ってしまった。
そこへ看護師が世良に声をかけ『渡海が通り抜けていった』と伝え、世良は慌てて探しに行ったのだった。
■病室の佐伯
佐伯は自分の病状をタブレットで確認する。
そこへ渡海が『カエサルは間違いなく失敗する』と声をかけた。
それは理事長の椅子を失うどころか、自分の命まで失うことになると。
それでも佐伯は渡海に助けを求めなかった。
渡海は佐伯の命を助けたいのではなく、佐伯が守る患者の所在を知りたいだけだと。
佐伯は、人には時として命より大事なものがある。自分を見くびるなと言った。
断固として手術はカエサルで行い、自分が生き延びる方法はそれしかないと断言したのだった。
そんな佐伯に渡海は『このままここで静かに死んでいってください』と冷徹な一言を放つのだった。
■冷徹な西崎
一方高階は帝華大の西崎教授を訪ねた。
高階は西崎にカエサルのデータを貸してほしいと願いでる。
断る西崎に、カエサルの論文がまだ出来ていないのだと紙を見せた。
しかし、西崎は『論文はすでにある』と言ったのだ。
西崎は坂口に書かせたのだ。
ショックを受ける高階は『これまで何のために・・・』と脱帽するが、西崎は『何のため?私のためだ』と冷徹な言葉を投げつけた。
立ち去ろうとする西崎に『あなたにとってカエサルとは何ですか?』と尋ねる高階。
『研究とは何なんですか?』『人の命を救うためのものなんじゃないんですか?』と西崎の胸倉をつかみ問いかけた。
しかし西崎は『いままでご苦労様でした』と言い背を向けた。
それでも食らいつこうとする高階は他の医師らに押さえつけられる。
『あなたはそれでも医者か!』と声をあげるが、西崎はふざけた笑を浮かべて『はい。医者です』とこたえたのだった。
そして『東城大の先生がお帰りのようだ。送って差し上げなさい』と完全に切り捨てたのだった。
それをドアの隙間から見ていたのは日本外科ジャーナルの池永だった。
■焦る黒崎の出した決断
東城大に戻り、佐伯のシュミレーションをしていた手術室で高階はたたずんでいた。
そこへ戻ってきた黒崎。
黒崎は去ろうとする高階に『執刀を頼みたい』と願った。
『佐伯教授の命を救うには君の力が必要なんだ』という黒崎。
今回の手術のシュミレーションは貴重なデータになるから、帝華大への良い手土産になるだろうと。
理事長戦は完全に西崎教授の勝ちだ。それは悔しいが、それでも佐伯教授の命には代えられなかった。
命を救いたい。ただそれだけだと頭を下げた黒崎に、高階は自分は西崎に捨てられたのだと言った。
高階は西崎に、そして黒崎は佐伯に、お互い何年も従い仕えてきた。だからその想いも無念も分かる。
一緒に支えてくれと黒崎は再び高階に頭を下げたのだ。
高階はそんな黒崎に自分にも手伝わせてくれと頼んだのだった。
そして佐伯を救うために一気団結した東城大ドクターズ。
それを聞いた佐伯は、みんなの様子が見たいから撮影しておいてほしいと婦長に頼んだ。
国内外問わず必至に類似した症例を探すが、稀な症例のため見つからない。
シュミレーションを重ねていくしかないと、何度もトライするも時間切れになる。
高階は渡海に力を貸してほしいと頼むが『なら俺にメスを持たせればいいだけだ』と言い去っていった。
その様子を見ていた世良は一つの事を思いつく。
渡海と佐伯の間にある溝の原因を突き止めること。それには『飯沼達次』を知る必要があった。
一方、高階は黒崎にカエサルの執刀を渡海に任せたいという。
佐伯は断るだろうが、佐伯の命を救うためである。黒崎は自ら渡海に話すと言うのだった。
黒崎は渡海の父親と関りがあったのだ。だから渡海とも話をする必要があるのだと。
■世良は都会の部屋で『飯沼達次』に関する情報を探す。
そして米の袋から見つかったのは例のレントゲン写真だったのだ。
そのレントゲン写真が入っていた封筒には、
患者名:飯沼達次
担当医:渡海一郎
とかかれていたのだった。
部屋に戻ろうとする渡海を黒崎が引き留めた。
今回のカエサルの手術を・・・と言いかけるが、渡海は『メスで行うように教授を説得してくださいよ』と言う。
『じゃないと死にますよ』と言い残し部屋に入ると、そこには世良がレントゲン写真をもってたたずんでいたのだった。
渡海を追って部屋に入ってきた黒崎。
そしてレントゲン写真を見て動揺する世良。
黒崎は世良が持っていたレントゲン写真を取り上げ、それがここにあることに驚いた。
説明に困っている世良。渡海はそれを俺のだ、返せと奪い取る。
何故それを持っているのかと問い詰める黒崎に無言の渡海。
しかし、黒崎は渡海の行動を逆恨みだと言った。『東城大の恥さらしの息子が』と。
黒崎は渡海に病院を出ていくようにいう。佐伯の手術が終わるまで自宅待機だと。
しかし渡海は『自宅はここなんですけど』とバカにした笑を見せた。
逆上し『出ていけ!』と叫ぶ黒崎を背に渡海は部屋を出ていった。
その様子を不審がるドクターたち。
また、心配する猫田は仮眠室の方をみつめていた。
仮眠室では世良が黒崎にレントゲン写真について聞く。
また渡海が飯沼達次を探していたことも話した。
黒崎は『何もかも終わったこと』だと言った。
■黒崎の指導医は渡海の父親だった。
渡海一郎は優秀な医者だが野心が強く上を目指し、当時の教授と折り合いが悪かった。
そんななか渡海は飯沼の手術を請け負った。症例上は簡単な手術だった。
飯沼の術後のケアについて渡海一郎に尋ねた黒崎。しかし渡海一郎が手にしていたのは飯沼達次のペアンが体内に残されたレントゲン写真だったのだ。
黒崎は説明を求めたが、渡海一郎は言わなかった。
ペアンの置忘れ。明らかな医療過誤だった。渡海一郎は東城大を除籍処分をうけた。
ペアンは当時の医師が秘密裏に取り除き事なきを得たと言われいる。
そして佐伯は渡海の息子を不憫に思い、東城大に招き入れた。
しかし教授の座についた佐伯を気に入らなかったのではと推測した。
渡海は信用できない。手術は自分たちだけでやる。黒崎は決心した。
そして世良にもオペのチームに入るように促した。
渡海のメスなど必要ないと・・・。
■オペ室で器具の手入れをする花房
花房は以前『飯沼達次』について調べていた時に看護師の猫田に渡海の邪魔をするのならつぶすことになると警告をうけていた。
それを気にしながら作業をしていると、後ろから現れた猫田。
猫田は仮眠室で黒崎と何を話していたのか、渡海が出ていったことと関係があるのか、と聞いた。
言葉に詰まる花房に畳みかけるように『渡海一郎のこと?』と聞く猫田。
更に問い詰めようとする猫田だが、そこへ婦長が現れ仕事に戻るように注意する。
立ち去る猫田を見送って、不調は花房に黒崎から何を聞いたのか聞いた。
花房は全て話す。婦長は余計なことはしゃべらないようにと忠告した。
猫田とそして世良もだと。婦長は自分が一言いえば研修医一人くらいすぐに首に出来るのだと花房を脅した。
■日本外科ジャーナルにカエサルの論文が
寮の食堂で渡海にご飯をよそう世良。
世良はカエサルのマニュアルをみて勉強をする。
行き詰る佐伯のオペ法に頭を悩ませる世良に、渡海は『症例やら論文やら。日本一扱っているところに聞きに行け』とアドバイスした。
池永は寺崎に理事長選の前にカエサルの論文が載った日本外科ジャーナルが公表されることを伝えた。
喜ぶ寺崎。インパクトファクターも佐伯を上回り、理事長選は自分の勝利になると。
そして、佐伯のオペは難しいものになると知れ渡っていた。
池永との電話を切り、振り向く寺崎を拍手で迎える帝華大の医師たち。
『私の勝ち』寺崎は一言そう言った。
池永は論文の原稿をめくり最後のページの寺崎の名を見つめる。
池永は高階の言葉を思い出していたのだった。
そこへ来客が。
訪れたのは木下と世良だった。
カエサル手術について世良が聞きに来たのは日本外科ジャーナルだった
しかし池永は論文を見せることはできないという。
だがそれはすでに渡海に言われていて分かっていた。
渡海に『じゃあどうすれば良いんですか?』と尋ねた世良。
渡海はバカはバカなりにそのまま尋ねたら良いんじゃないか?という。『じゃあどうすれば良いんですか?』と。
世良は佐伯のカルテを見せて何かアドバイスを頂けないかと聞く。
世良は再び渡海との会話を思い出す。
渡海は馬鹿なやつだと怒られて帰ってこいと言った。
池永は少しイライラしながら『アドバイス?キミは馬鹿か?』と言う。
『頼む相手を間違ってるんじゃないか』と。
池永は自分の仕事が忙しいのだと言い放ち食事を続けた。
世良は『忙しい仕事とは何なのか』と聞いた。
世良は正直に言う。
『僕には偉い人のインパクトファクターをあげて出世させるという。そんなお仕事にしか見えなくて』
世良を止めようとする木下。
『論文なんて作文みたいなもので、で、よく書けましたって花丸で、で、偉い大人たちがワイワイ喜んでチヤホヤされて、それの何が楽しいのか僕には理解できなくて』
池永は世良の言葉に怒り帰ろうとするが、世良はそれを引き留めようとする。
医者の癖に人の命を助けてくれなんて馬鹿にもほどがある!と激怒する池永に、世良は自分なんて医者じゃないと言った。
患者の命を救えない医者なんて医者じゃないと。
世良は続ける。
ある方は、決して命から逃げず、常に先頭にたって日々戦われていて、
ある方は、テクノロジーを信じて未来の命を救おうとされています。
そしてもう一人、その人はもう悪魔みたいな人でいつもめちゃくちゃなことを言って僕も振り回されているんですけど、それでも必ず命を救うんです。自分の腕一つで目の前にある命を必ず救ってくださるんです。
どなたも僕が尊敬する医者の中の医者だと。
東城大ではオペに向けてシュミレーションを繰り返しているが上手くいかず、海外のダーウィン手術で似た症例が無いかを必死に探していた。
東城大は今メスというプライドを捨てて全員がひとつの命を救うために必死だった。
佐伯教授の命は、佐伯教授の手術を待つ何千人の患者の命でもあるのだ。
世良は涙ながらに言う。できる事は全部したい。僕も医者でありたいからと。
池永に土下座をして協力を願う世良。
そんな世良に池永は、ダーウィン手術で佐伯の症例と似た手術の成功例を記した論文をみたことがあると言った。
世界ではまだ知られていないアメリカの小さな研究所が出した雑誌だったと思うと。
特別なルートがあるから、自分が問い合わせると約束してくれた。
世良は涙でぐしゃぐしゃになった顔でお礼を言う。
それが論文本来の役割だからと池永は言った。
池永自信、小さい頃にもう命がないと言われる病気を患っていた。だが当時の医者は世界中から論文をかき集めて治療法を見つけてくれたのだ。
世界のどこかの誰かの研究が他の国の誰かの命を救う。その為の論文だと。
誰かの出世のためなんかじゃない命のためだと。その橋渡しをするのが自分の仕事だと、池永は思い出したのだ。
■世良は池永に取り寄せてもらった論文を高階らにみせる
それを見た医師らは、佐伯教授の症例と類似するこの術式を取り入れることにし、新たにプランを立て始めた。
このプランは二つの箇所からのアプローチではなく、一つの穴から左冠動脈バイパス術と僧帽弁形成術を行う方法だった。
開ける穴を一つにすればオペ時間を短縮できる。
不可能を可能にする方法だった。
世良は渡海にも報告する。
渡海はこの方法を見つけてきた世良を褒める。
しかし世良は手術まで時間が無い事から、出来るかどうか・・・と口にした。
渡海はそれを聞いて、出来るかどうかじゃない。やれと言った。
『教授殺したら、お前ら全員殺す』と。
まだ佐伯に死なれたら困るという渡海。
世良は再び『飯沼達次』について聞いた。
しかし、渡海は『佐伯を殺すためだ』と言い放った。
佐伯に手術のプランについて説明する高階。
成功すればカエサルでは世界初になる。論文にまとめたいくらいだと高階は言った。
高階にカエサルの論文の進みを聞く佐伯だが、高階はすでに自分以外の医者が書いていたことを伝えた。
佐伯は『それはよかった』と不敵な笑いをする・・・が直後、急な発作が佐伯を襲った。
佐伯は心筋梗塞を起こしたのだ。
事態は急変し、手術室に運ばれる佐伯。
連絡は寮にいた世良のもとにも。それを聞いた渡海は舌打ちをして出ていった。
■手術室では
佐伯が急な心筋梗塞を起こしたことで、シュミレーションは不十分なままの本番となってしまった。
またこの心筋梗塞のせいでタイムリミットは1時間と予定時間の半分となってしまった。
手術は困難を極めた。左冠動脈がモニターから全く見えないのだ。
カエサルを突っ込んだために右心室から出血が起こった。
そんな中、病院に現れた渡海と止めるために手術を見守っていた医師たちは渡海を探しに行く。
世良は渡海にオペ室には入れないと言い、1人オペ室に向かった。
そこにバリケードを作っていた医師たちと遭遇する。世良は『オペ室にはこない』とだけ言い、自分は急ぎオペ室に向かった。
手術を開始して40分が経過した。サチュレーションはどんどん低下する。
いつ心臓が止まってもおかしくない状況まで来てしまった。
猫田が医局のモニターで手術を見守るところに渡海は現れた。
が、ここで異常アラームが鳴り始めた。
左冠動脈を見るために心臓を押さえたことが原因だった。
一旦押さえを解くとアラームは止まるが、左冠動脈は見えなくなる。
45分が経過した。
届かない。すぐそこにあるのに。15分じゃ無理だ。
高階はカエサルの操縦から手を離した。
これ以上カエサルを突っ込んでも心臓を傷つけるだけだ。
これ以上はもう・・・
手術室もモニターを見守る医師たちも絶望していた。
黒崎は誰に対してか、教授を助けてくれと叫んだのだった。
神様でも・悪魔でも・・・
皆が絶望し下を向いていると急にカエサルのアームが動き出した。
だが動かしたのは高階ではない。
『どういうことだ』
驚く高階に世良はイヤホンをつける。
『こういうことだ』
その声は渡海だった。
渡海は医局にあるシュミレーションに使っていたカエサルをつかって手術室のカエサルを遠隔操作していたのだ。
世良は高階に指示を仰ぐようにみせ、オペ室にあるカエサルのアクセス許可を実行した。
高階は渡海にこれ以上カエサルを突っ込めないという。
それに対し渡海は突っ込めないなら心臓を引っ張り出せばいいと言った。
高階は吸盤を使う指示をだした。
猫田がそれをもってオペ室に現れる。
手術室では高階が渡海の指示通りに声を荒げる。
その言葉遣いは渡海そのものだ。
バイパスを渡すところまでは何とかうまくいったが、時間がない。
渡海はカエサルで佐伯式をやるという。
高階の指示に驚く手術室チーム。
そして黒崎は気付いた。高階の手が動いていないことに。
手術はまるで神がかった勢いで終わり、成功した。
■渡海を探す高階と世良
医局にはもう渡海はいなかった。
世良はそこに置いていたカエサルのマニュアルを見つけ、渡海がマニュアルを読んでいたことを知った。
『やっぱりすごい人ですね』と高階に声をかけた。
高階は医局においてあるカメラに気が付いた・・・
■目覚め
佐伯は黒崎と婦長の見守る病室で目を覚ました。
『生き延びたか』
『生き延びたからにはやるべきことがある』
佐伯は何を決意したのか。
■カエサルの論文
高階は池永にカエサルの論文を送ったのだ。
掲載を考えてほしいと。
その後、日本外科ジャーナルが発行された。
西崎は自分の名前が書かれていることを確認し勝利に満ちた顔をした。
しかし、次のページをめくると、そこには高階の論文が。
そしてその最後の名前には佐伯の名前が掲載されていたのだった。
カエサルの論文は二つ掲載されていた。
すぐに池永に問い合わせる西崎。
池永は論文の内容もそれに添付されていた映像も素晴らしいと評価をつけた。
一流の外科医が一流の機器を使うことによって超一流の手術がが実現したのだという池永に、怒りを隠さない寺崎。
しかし池永は東城大の論文の方が未来を見据えた優れたものだと思ったとはっきりを対立を示したのだった。
■佐伯は渡海がカエサルを使うことを予測していた
高階は佐伯に尋ねた。
佐伯は、渡海は今私に死なれたら困るからなという。
そして席を外すようにと指示し振り向いた先には渡海がいた。
『お前のおかげで生き延びることができた』
『それで改めて私を殺しに来たということか』
それに対し、渡海は『飯沼達次』の居場所を聞く。
しかしそれだけは言えないと。
しかし、飯沼達次は東城大にいた。
秘密をしる花房に婦長は飯沼の入院のケアを任せた。
佐伯の手配でここに入院させられていたのだ。
佐伯は言う。
『ブラックペアンを使えるのは世界にただ一人だけだ』
『今のお前に渡すわけにはいかない』
渡海は奪い取るだけだと言い、その後の言葉に佐伯は表情を変えた。
佐伯教授は渡海の働きでその命を救われました。
しかしそれでも二人の溝が埋まることはありません。
そして次は最終回です。次回予告で流れた『地獄のとびら』とは・・・。
原作どおりなら、この後の結末はあまり楽しいものではありません。
しかし、どうか父の疑いが晴れ、渡海が背負うものが軽くなり、渡海に第2のスタートが切れる・・・そんな内容であったらなと願います。