子供の夏風邪でとてもポピュラーな感染症の一つが『手足口病』です。
毎年初夏から8月頃にかけて、特に幼児の間で流行しやすい手足口病は飛沫感染や接触感染でうつってしまうので幼稚園や保育園に通うお子さんがいらっしゃるご家族はこの時期注意が必要です。
このサイトでは手足口病の潜伏期間や症状と他の夏風邪との違いや見分け方、そして効果的な予防法と、感染してしまったあとの対処法についてまとめました。
『手足口病』とは子供が夏にひく三大夏風邪の一つです。
流行する季節は大体初夏の6月頃にポツリポツリと出てきて、7月くらいに流行のピークを迎えます。
同時期に流行る『ヘルパンギーナ』と『咽頭結膜炎(プール熱)』とは違い外見から見て症状が分かるのが特徴です。
『手足口病』に見られる症状についてまとめました。
■手足口病の症状と詳細
手足口病は大体7月頃にピークを迎えるウイルス性の感染症です。
原因のウイルスにはエンテロウイルスとコクサッキーウイルスがあり、種類が複数あることから1度かかったからと言ってもうかからないということは無く、何度でも感染し発症する可能性があります。
患者の大多数が未就学児で全体の80%を占めます。なお、稀ですが子供から大人に感染することもあります。
潜伏期間は3日~6日程度です。口の中や手のひら、足の裏や甲などに水泡が現れ数日間発熱することがあります。
水泡は大体1週間程度でなくなりますが、1~2ヶ月後くらいに手足の爪が剥がれることがあります。
大事になる事はあまりなく、すぐに新しい爪が生えてくるので心配はいりません。
手足口病で一番心配なのが、口の中に出来た水泡が潰れると口内炎が出来、痛みのために食事や飲み物を嫌がることがあることです。
夏場のため脱水症状を起こす状況には十分気を付ける必要があります。
特効薬はないため、治す薬というものはありませんが、症状を抑えるために鎮痛剤などを処方してもらうことはできます。
また稀ですが脳炎を起こし重症化することもあります。様子がおかしいときは速やかに医療機関の受診をしましょう。
■ヘルパンギーナと咽頭結膜炎(プール熱)の症状は?
同じ時期に流行することで素人には判断に困ることがあるのがヘルパンギーナと咽頭結膜炎(プール熱)です。
この二つの感染症についても詳しくまとめました。
・ヘルパンギーナ
ヘルパンギーナは6月から初夏にかけて流行し、特に乳幼児に多くみられるウイルス性の感染症です。
ウイルスは主にコクサッキーウイルスA群が原因となっていますが、ウイルスの型が複数あるため何度もかかることもあります。
稀ですが、大人にもうつることがありますので感染予防はしっかりとしましょう。
潜伏期間は3日~6日ほどで、39度以上の高熱が数日続き、喉が赤く腫れて小さな水泡がたくさんできます。
この水泡はだいたい2日~3日で潰れて黄色い潰瘍になります。
喉の痛みが強く、乳児は食事や水分補給を嫌がり脱水症状を起こす可能性もあります。
またヘルパンギーナにも特効薬はなく、治す薬というものはありませんが、症状を抑えるために鎮痛剤などを処方してもらうことはできます。
・咽頭結膜炎(プール熱)
咽頭結膜炎(プール熱)はアデノウィルスが原因となるウイルスです。ウイルスは年間を通して発生しています。
またプール熱という名称は、夏の期間にプールの水を介して人から人へうつり、流行が拡大しやすいことからそう呼ばれています。
潜伏期間は2日~14日程度です。症状は喉の痛みや結膜炎による目の充血、そして39度前後の高熱が数日から1週間くらい続きます。
それ以外にも頭痛や食欲不振、そして結膜炎により涙の量が多くなるなどの症状がみられることもあります。
特効薬はないため、治す薬というものはありませんが、症状を抑えるために鎮痛剤などを処方してもらうことはできます。
結膜炎にはステロイド入りの目薬や抗生剤、抗ヒスタミン薬などが処方されることもあります。
これらの事からヘルパンギーナと咽頭結膜炎(プール熱)と違い、手足口病は手のひらや甲、足の裏や甲、指の間に発疹が出るため目視での判断ができます。
あまり高熱にならないことも特徴とされていますが、個人差はあり中には高熱を出すお子さんもいらっしゃるので様子を見ることが大切です。
また口の中に出来た発疹が潰れると強い痛みがでるため、食事・水分補給が困難になるため、脱水症状にはしっかりと気を付ける必要があります。
手足口病、ヘルパンギーナ、咽頭結膜炎(プール熱)に共通しているのが、エンベロープがないタイプのウイルスであるということです。
そのため、通常のアルコール殺菌や消毒剤による除菌の効果があまり期待できません。
■エンベロープウイルスとエンベロープが無いウイルスの違い
ヘルパンギーナ・手足口病・プール熱はいずれも飛沫感染・接触感染でうつりますので保育園や幼稚園では流行しやすいウイルスです。
そしてこの3つの感染症に共通しているのが、エンベロープが無いタイプのウイルスだということです。
ウイルスは構造から、エンベロープのあるウイルスと無いウイルスに分けられます。
エンベロープとは脂質性の膜です。そのため脂質に作用するものには弱く、ダメージを受けるとエンベロープウイルスは失活します。
それに対し、エンベロープが無いウイルスは同じ対処法では効果が出にくい傾向にあるのです。
この事から分かるように、エンベロープウイルスにはアルコールや消毒剤が効果的ですが、エンベロープが無いウイルスには効きにくいということになります。
また、手を介して口から侵入して腸管に感染するウイルスは胃酸や胆汁酸にも強いエンベロープが無いウイルスになるのです。
・ノンエンベロープウイルスの代表的なウイルス:ノロウイルス・ロタウイルス・ポリオウイルス・アデノウィルスなど。
■手足口病の効果的な予防方法
手足口病を含め、これらの感染症は飛沫感染と接触感染が主な感染ルートです。
大人であればマスクをすること、こまめな手洗いやうがいでおおきな予防効果が望めますが、乳幼児となるとなかなかそうはいきません。
そして、上記にも書きましたがこれらのウイルスには一般的はアルコールや消毒剤での除菌・殺菌効果があまりない事も重要なポイントです。
ウイルスの数は無数ですが、そのタイプを知っておく事で使用すべき殺菌・除菌アイテムを区別することが出来ます。
上記に書いたエンベロープを持たないウイルスには酸性のアルコール消毒剤が有効なのです。
そのため、子供たちの生活環境の清掃には、酸性アルコール消毒剤を使用し、特に『手』がよく触れる場所は念入りな洗浄と除菌を心がけましょう。
また子供が少し大きくなってきたら、やはりマスクの着用を練習したり、うがいと手洗いを習慣化するようにする事で予防効果はぐんと上がります。
そして見落としがちですが、手足口病のウイルスは便から排泄されるため、4週間くらいはオムツ交換をした際の消毒をは徹底しましょう。
いずれの感染症も高熱や痛み、痒みなどの不快な症状が出ます。かからないに越したことはありませんので流行する季節にはしっかりと予防を意識するようにしましょう。
■それでもかかってしまったら
どんなに予防をしていても、子供同士で集団生活をしている環境だとどうしてもうつってしまう事があります。
くしゃみや咳による飛沫感染、そして感染者が触れたおもちゃや食器などに触れる接触感染。
どちらも小さな子供に予防することは難しいのが現状です。
では、実際に手足口病にかかったらどうしたら良いのでしょうか。
手足口病にはそれを治す薬はありません。症状が重く感じた時は医療機関を受診することで解熱鎮痛剤や皮膚の痒み止め、粘膜保護の軟膏などの症状を抑える薬をもらうことはできます。
ただし特効薬があるわけではないので、本人の機嫌がよく症状があまり重くないようでしたら自宅で様子を見ることも可能です。
食事や水分は、喉に痛みがあるため刺激のある食べ物や飲み物は避けるようにしましょう。
普段与えることの多い、100%の果物ジュースなどは喉にしみやすいです。
また冷たい方が飲み込みやすいため、冷えた麦茶や牛乳などが比較的うけつけやすいです。
食べ物は喉の痛みがつらいときは栄養は意識せず、ゼリーやプリンでも構いません。冷めたおかゆやおじや、冷ややっこなども食べやすいです。
症状そのものはそんなに長引くことはありません。過ごしやすい環境と水分補給に気を付けて症状が治まるのを待ちましょう。
また、1~2ヶ月後くらいに突然手足の爪が剥がれることがありますが、特に痛みを訴えることはほとんどなくすぐに新しい爪が生えてくるので慌てず見守りましょう。
■手足口病は登園停止扱いになる?
ウイルスによる感染症ではありますが、手足口病はインフルエンザのような出席停止扱いにはなりません。
熱が下がっていて、本人の機嫌がよく食事が普通に取れるなど、状態が良ければ登園することが出来ます。
しかし、大流行時や地域や施設によっては特別な処置をとる場合もありますので、自己判断はせずに確認をするようにしましょう。
いかがでしょうか。
手足口病を含む夏の三大風邪には効果的な特効薬がなく、体内からウイルスがすべて排出され症状が治まるのを待つしか完治させる方法がありません。
長期に渡って続くものではありませんが、いずれの感染症も痛みやかゆみなどの不快感が強く出るため乳幼児にとっては大変つらいものです。
可能な限り予防をして、それでもかかってしまったら安静にすることと感染拡大を防ぐことが大切です。
せっかくの夏休みを手足口病で楽しく過ごせない・・・なんてことの無いようにしたいですね。