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マルトリートメントとは?NHKプロフェッショナル仕事の流儀「傷ついた親子を幸せに」

マルトリートメントという言葉をご存知でしょうか?日本ではあまり聞き馴染みが無いかもしれませんが、現代においてとても考えさせられる言葉なのです。

2018年11月5日にNHKで放送されたプロフェッショナル仕事の流儀でも取り上げられ、少し世の中に知れ渡るかもしれませんが、子育て中のお父さん・お母さんはぜひ一度普段の子供との接し方について感がえてみてほしい内容になっています。

このサイトでは番組に登場した小児神経科医・友田明美さんの著書「子供の脳を傷つける親たち」を元に詳しく書いていきたいと思います。

マルトリートメントとは?NHKプロフェッショナル仕事の流儀「傷ついた親子を幸せに」

本やテレビ番組で最近取り上げられている「マルトリートメント」

まず紹介したいのが自身も親でありながら小児神経科医として活躍する友田明美さんです。

⬛友田明美さん

友田明美さんは現在福井大学子どものこころ発達研究センターの教授であり副センター長を務められています。

また福井大学医学部附属病院子どものこころ診療部部長を兼任されており、2017年からは日米科学技術協力事業「脳研究」分野のグループ共同研究日本側代表も務められている方です。

専門分野は小児発達学と小児精神神経学であり、彼女の著書には「子どもの脳を傷つける親たち」などがあります。

今回、NHKのプロフェッショナル仕事の流儀で友田明美さんが語られた「マルトリートメント」について子育て世代の家族は色々と考えさせられることがありそうです。

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「マルトリートメント」とは?

ではマルトリートメントとは一体何なのでしょうか。

日本語にするとマルトリートメントとは「不適切な養育」と言われています。

昨今、日本では子どもに対する親からの虐待問題が深刻な問題となっていますが、虐待と認識していなくても体罰や暴言などで子どもを虐げてしまっていることがどの家庭にもあると思います。

このようなことを総称してマルトリートメントと言います。

では、このマルトリートメントが一体どんな影響を及ぼすのでしょうか。

小児神経科医の友田明美さんは実際にマルトリートメントを受けた人の脳をMRI(脳の画像を撮る機械)を用いて調べてきました。

その結果、虐待や体罰を受けることで脳の大事な部分に傷がつくことがわかったきたのです。

発達段階の子どもの脳に大きなストレスを与え、実際に脳を変形させていることが明らかになりました。

⬛脳が傷つくとどうなるのか?

脳が傷つくことによって、子どもの学習意欲が低下したり、引きこもりがちになったりします。

また大人になってから精神疾患を引き起こす可能性が出ることもあります。

⬛どの家庭でも起こりうる

アメリカでは1980年代からこのマルトリートメントという表現が広まりました。

その後日本では、子どもの健全な発達を妨げる行為を意味する「不適切な養育」と訳されます。

マルトリートメントは虐待とほぼ同義になりますが、大人側に加害の意図があるか無いかにかかわらず、そして子どもに目立った傷や精神疾患が現れなくても、行為そのものが不適切であればそれはマルトリートメントになります。

そしてマルトリートメントには心理的に傷つける行為も含まれており、それは「躾」と称して怒鳴りつけたり、脅したり、また暴言をあびせるといった行為も該当するのです。

つまり、テレビなどで報道されている度重なる酷い暴力や死に至るような過激な暴力だけがマルトリートメントと言わるのではなく、ごく普通のどの家庭でも起こりうるものなのです。

テレビなどの極端な虐待事件をみて、自分は無関係だと思って見過ごしている親や子どもに関わる大人が日常的に不適切な接し方をして子どもの脳を傷つけている可能性があることを忘れてはいけません。

健全な発育を妨げるマルトリートメントと傷つく脳の関係

マルトリートメントの定義は「子どものこころと身体の健全な成長・発達を阻む養育」とされていますが、その内容は暴力や暴言など様々です。

脳が傷つくことによって子どもは様々な問題を抱えやすくなっていきます。

そしてどのようなマルトリートメントを受けるかによって脳がダメージを受ける場所が変わることもわかっています。

MRIで撮影された脳画像の研究からは、小児期にうけたマルトリートメントの種類と脳の傷つく部位に関連があることがわかってきました。

例えば、体罰による脳へのダメージは「前頭前野」の萎縮を発症し、性的マルトリートメントや家庭内暴力の目撃からは「視覚野」の萎縮が。

そして暴言によるマルトリートメントでは「聴覚野」の肥大がみられました。

これらの症状は脳が傷つけるものから自分を守ろうとする「防衛反応」だと考えられています。

⬛一度傷を負うと元に戻すのは容易ではない

マルトリートメントの頻度や強度が増すと、子どもの脳は物理的に損傷することが分かりました。

その結果、学習意欲の低下や非行に走るなどの行為、そしてうつや総合失調症といったこころの病気を引き起こす危険性があるのです。

そして一度傷を負った脳は容易に元に戻すことはできないのです。

程度の差はあれど、マルトリートメントが無い家庭はありません。

子どもとの距離感や、育児に関する世の中のニーズなど多くの親が子育てに迷いを抱えている現代だからこそ、親は子どもに対する言動が子どもの脳にどのような影響を与えるのかを知っておく必要があります。

「マルトリートメント」の種類と脳が受けたダメージの影響

⬛身体的マルトリートメント

暴力による身体的マルトリートメントを受けた場合、ダメージを受ける脳の部位は「前頭前野」です。

子ども時代に体罰を受けた経験がある人の脳をMRI検査で調べた結果、この前頭前野の容積が平均の19.1%も減少することが判明しました。

前頭前野は20代後半までゆっくりと成長するものですが、その一部が壊されるとうつ病に似た症状が出やすくなります。

そして前頭前野は犯罪抑制力に関わる部位でもあるため、問題行動を起こす確率も高くなり非行に走りやすくなります。

⬛性的マルトリートメント

性的マルトリートメントによる脳のダメージは「視覚野」に現れます。

性的マルトリートメントを受けたことがある人は大脳皮質の後頭葉にある「視覚野」の容積が受けていない人よりも平均18%も減少していたのです。

特に減少が目立つ部位は、視覚野の中で顔の認知などに関わる「紡錘状回」です。視覚野の減少は視覚的な記憶機能の低下が関係していると考えられています。

⬛精神的マルトリートメント

言葉の暴力や親の家庭内暴力を目撃するなどの精神的マルトリートメントで受ける脳のダメージは「聴覚野」「視覚野」に出ます。

暴言によるマルトリートメントが受けたことがある人は大脳皮質の側頭葉にある「聴覚野」の一部の容積がシナプスの正常な刈り込みができず、受けていない人に比べると平均14.1%も増加していました。

暴言を浴びせられた子どもは理解力が低下し、心因性難聴になりやすくなることがわかっています。

また脳の視覚野が萎縮するというデータも出ており、視覚からの情報を最初に受け取る力、記憶する力が弱まり、結果知能や学力が低下する可能性が指摘されているのです。

愛情によって子どもを追い詰めない

愛の鞭のつもりがいつの間にかエスカレートして結果虐待になってしまうことを防ぐために、子どもの気持ちに寄り添った子育てをしていくことが大切です。

子どもの脳に及ぼす影響をしっかりと理解し、体罰や暴言による子育てをしないように、また大人と子どもの力関係は対等ではないと認識するようにしましょう。

大人は子どもにとって「強者」です。そして「弱者」にあたる子どもを怒鳴りつけたり、体罰を与える行為は大人が想像するよりも遥かに大きな衝撃を与えてしまうのです。

爆発寸前なのであれば、一旦クールダウンをするようにし、イライラした感情のまま子どもと関わらないようにしてみるのも大切です。

本来「躾」は子どもに恐怖を与える行為ではなく、正しく導いてあげることが目的でなければなりません。

子どもは生きていくために大人の養育が必須です。そしてその養育には愛情が無いといけないことは誰もが知っていることです。

子どもを健全に育てるためには親も同じく健全で有ることが望ましいです。

もしも子育てで悩んだときは1人で抱え込まずに行政など様々な機関を用いてSOSをしっかりと出しましょう。

最近の子どものこころの発達に関する病院や行政では、子どもだけではなく親もサポートしていく施策を整えている場所が多いです。

相談することに躊躇せず、将来を担う子どもたちを社会全体で育てて守っていくという認識を持つようにしましょう。

まとめ

いかがでしたか。

「虐待」と聞くと、自分とは関係無いと思いがちですが、「マルトリートメント」という言葉に当てはめたら何かしら自身の行動にも思い当たるものがあるのでは無いでしょうか。

子育ては子ども個々の正確や発達状況にもより、スムーズに問題なくできる親御さんはそうはいません。

現代では共働き世帯も多いため、親自身が疲弊してしまっていることもあり、中々子どもと向き合ったりすることも容易ではないこともあります。

しかし「マルトリートメント」はどの家庭にもある身近な問題です。他人事とは思わず自分の子育ては大丈夫なのか振り返ってみることも大切です。

もし、すでに子育てに悩まれているお父さん、お母さんは、家庭だけで抱え込むことはせず周りに相談したり話を聞いてもらうようにしてみてください。

親も子どもも毎日笑って過ごせる、そんな家庭を築いていきたいですね。

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