高畑勲監督の遺作[かぐや姫の物語]が5月18日の金曜ロードSHOW!で公開

この作品はジブリ映画でおなじみの高畑勲監督が手掛けた2013年11月に公開された映画です。

その4ヶ月前に同じくジブリから宮崎駿監督が[風立ちぬ]を公開したことは記憶に新しいものです。

この両監督が同じ年に作品を公開するのは実に25年ぶりだったそうです。

しかし、その高畑勲監督は2018年4月5日に亡くなられました。肺がんだったそうです。

今回の金曜ロードSHOW!はその追悼番組としても注目を集めています。

この作品を通して高畑監督は何を伝えたかったのでしょうか。

かぐや姫こと竹取物語を原作に作られたかぐや姫の物語

まず子供の時に絵本で読んだかぐや姫を連想してこのアニメを観てはいけません。

この作品は日本最古の物語である竹取物語を原作にして高畑勲監督が手掛けた作品です。

映画紹介のスクリーンに公開された、かぐや姫が全力で疾走するシーンなど、童話のかぐや姫にはないですよね。

あらすじは竹取物語にかなり忠実に描かれており、観る人によっては苦手に感じる方もいるようです。

■姫の犯した罪と罰とは

この作品のキャッチコピーである[姫の犯した罪と罰]とは何なのでしょう。

原作では姫は犯した罪を償うために地上に降ろされたと言う内容になっています。

高畑勲監督が語った姫の罪とは「虫や鳥や動物たちのように生きること」に憧れたせいだということです。

これはかぐや姫の物語のシーンのひとつにあるのですが、現代にはそんなことが罪に問われることはありません。

かぐや姫の育ての父、竹取の翁の想いを拒否する姫の心情は、現代に近い意志を持った人物だったのではないでしょうか。

かぐや姫の初恋だった捨丸は子持ちだし、姫の月への帰還を助けることもしません。

こうしてかぐや姫は最後まで裏切られ続けるのです。

物語の終盤、姫が月に帰還するシーンは、[生きること]に対するすべてを拒否する、大変衝撃的な内容になっています。

月の住人たちは[死]さえも超越した存在です。彼らが雲の上にたち姫を迎え入れます。

必至に翁にすがりつき、帰りたくないと号泣して懇願するも、あえなく月の住人の手によって天の羽衣をかけられたその瞬間に姫は表情を無くし、抵抗をやめ月へ帰っていきます。

この姫の涙は翁と離れる辛さやさみしさへの感情を強く表し、強い印象が残りました。

高畑監督が伝えたかったのは[生きること]の本当の意味だったのではないでしょうか。

[生きること]そのもの自体を問うこの作品は現代の人の心にどのように映ったのでしょうか。

高畑勲監督のあゆみと作品について

1935年三重県伊勢市で生まれる。

上京した大学時代にフランスの詩人で脚本家のジャック・プレヴェールの作品に出会い、彼に強く影響をうけプレヴェールの詩集[Paroles]の日本初完訳をした。邦題名[ことばたち]

東京大学文芸部仏文科を卒業。

卒業後は東映動画に入社する。わんぱく王子の大蛇退治や狼少年ケンで演出助手などを得て、長編漫画映画の太陽の王子 ホルスの大冒険の演出監督に抜擢された。

その後、宮崎駿らとともにAプロダクションに移籍し、ルパン三世テレビ第1シリーズを宮崎とともに担当し、のちにルパンシリーズの原作をつくりあげた。

また映画のパンダコパンダ。パンダコパンダ雨降りサーカスの巻の演出を務めた。この作品は脚本の宮崎駿のアイデアがたくさん盛り込まれ、となりのトトロのルーツとなる。

それから日本アニメーションに移籍し、アルプスの少女ハイジや赤毛のアンなどの演出を担当する。

未来少年コナンでは初監督で重責だった宮崎駿を演出でアシストするなど活躍している。

その後、テレコム・アニメーションフィルムに移籍する。

ここではじゃりン子チエの映画化の企画も持ち込まれ、高畑は原作を熟読し引き受けることに。1981年に公開された映画は制約の多い中での製作にもかかわらず大盛況だった。

■風の谷のナウシカ

その後、宮崎駿が監督する【風の谷のナウシカ】に参加しプロヂューサーを務める。

この風の谷のナウシカが成功を収めたことから、宮崎はこの映画で得た資金を、高畑が監督する映画に使いたいと提案し、その結果、柳川掘割物語を撮影することになる。

が、この作品は高畑があまりにも巨額な製作費を費やしたため、宮崎の用意した資金では足りなくなり、宮崎の自宅をも抵当に入れるといった状況になった。

宮崎は鈴木敏夫に相談し、新作アニメーション映画を作りその収入で賄うしかないと結論達した。

その後宮崎と鈴木は【天空の城ラピュタ】の製作を目指し奔走する。

天空の城ラピュタを製作するにあたり、制作会社が必要になった。(風の谷のナウシカを製作した会社はこの時点で解散済み)

そこでスタジオジブリが設立されたのである。

そして1988年火垂るの墓の監督を務める。この作品はわずかではあるが未完成のまま劇場公開という不祥事に。

それをきっかけに演出家をやめようと決意したが、宮崎駿に後押しされ、1991年におもひでぽろぽろで監督復帰を果たす。

それから1994年、自ら原作を手掛けた【平成狸合戦ぽんぽこ】を公開。

配給収入で26億円を得て邦画ではトップとなる。また高畑の監督作品でも最高の成績となった。

この平成狸合戦ぽんぽこはスタジオジブリ時代の監督作では唯一のオリジナル作品である。

1992年にホーホケキョとなりの山田くんを公開した後は、自身の作品の公開は10年以上途切れた。

そして2009年、高畑の新作が竹取物語を原作にしたものだと報じられた。

その後の雑誌インタビューで高畑は「ストーリーは変えずに印象が全く違う作品にしたいと思っています。なかなか進まなくてだいぶ先になっちゃうかもしれませんが」と語ったそうだ。

そしてその通り、高畑は製作に時間を要し、2012年12月にスタジオジブリから【かぐや姫の物語】とタイトルが発表された。

その時公開予定を2013年夏としていたが、製作の遅れから実際には2013年秋に延期され、劇場では2013年11月23日に公開された。

2018年4月5日に肝臓がんのため死去した高畑はこのかぐや姫の物語が遺作となった。

まとめ

いかがでしょうか。

2018年5月18日に金曜ロードSHOW!では高畑の追悼として遺作である[かぐや姫の物語]が放映されました。

彼の作品は生きること、生きるために現れる人の醜さや哀れな行動などを隠すことなく伝えています。

愛や勇気、時には魔法の力で乗り越える作品は確かに観る人をワクワクさせ、現実から逃避させてくれるかもしれません。

しかし、高畑は必ず[現実に還ること]を忘れずに作品を作っています。だからきれいごとだけの世界や現実離れした物は書かない。

そういった信念を持った高畑の作品は、時として苦手意識を持つ人も少なくなく、賛否がしっかり分かれると聞きます。

しかし、今回の[かぐや姫の物語]では、自由のない昔の女性の生き方、そして男性が求める女性像には現在も昔の女性の生き方が残っていることを伝えており、昨今、女性の社会進出など政治的にも取りだたされている中、大変な衝撃を与えたのではないでしょうか。

筆者の感想は、こうした現代の課題にも語り掛けるような作品が高畑勲監督ならではのものだと思いました。

新しい彼の作品が今度生まれることはありませんが、これを機会に過去の作品を観てみるとまた、彼が伝えたかったことが見えてくるかもしれません。

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